ChatGPTに決算短信を読ませる正しいプロンプト術
「要約して」では本質を見逃す。投資家視点で決算短信を正しく読み込ませるプロンプト設計を、比較例とコピペ可テンプレで解説する。
「決算短信、ChatGPTに要約させてみたけど、なんか薄い」という感想を持ったことはないか。
原因はプロンプトにある。AIは指示された通りにしか動かない。「要約して」と言えば表面をなぞるだけで、投資家が本当に知りたい「なぜ利益が増減したか」「ガイダンスは強気か弱気か」には踏み込まない。
この記事では、決算短信をChatGPTに読ませる際のプロンプト設計の原則と、シーン別のテンプレートを紹介する。コピペして即使える形にした。
「要約して」が最悪な理由
試しに決算短信PDFをアップロードして「要約してください」と打ち込んでみると、こんな出力が返ってくる。
「当期の売上高は〇〇億円、営業利益は〇〇億円となりました。前期比でそれぞれ〇%増加しています。来期の見通しについては……」
数字の羅列だ。これならPDFの1ページ目を自分で読んだほうが早い。
問題は2点ある。
① コンテキストを与えていない。ChatGPTはあなたが投資家なのか、記者なのか、就活生なのかを知らない。目的が不明なまま「要約」を求めると、最大公約数的な情報を返すしかない。
② 問いが抽象的すぎる。「要約」は読む側の問いを放棄した指示だ。「増収増益の主因は何か」「前期のガイダンスと実績の乖離はどこか」という具体的な問いに変えると、出力は一変する。
決算短信の構造を先に把握する
プロンプトを設計する前に、決算短信の構成を整理しておく。主要な記載箇所は以下の通り。
| セクション | 記載内容 | 投資家が注目すべき点 |
|---|---|---|
| 経営成績の概況 | 増減の定性的説明 | 一時的要因 vs 構造的変化の見極め |
| セグメント情報 | 事業別の売上・利益 | どのセグメントが牽引・足を引っ張ったか |
| 見通し(ガイダンス) | 来期の売上・利益予想 | 前期比・コンセンサス比での強弱 |
| 財務諸表 | BS / PL / CF | 在庫・借入・営業CFの変化 |
| 注記・特記事項 | 一過性損益・減損・訴訟 | 本業ベースの実力値を歪める要因 |
この構造を念頭に、「どのセクションの何を聞くか」を明示するのがプロンプト設計の基本だ。
正しいプロンプト設計の3原則
原則1: 役割を与える
あなたは株式投資の経験が豊富なアナリストです。
以下の決算短信を投資家の視点で分析してください。役割を与えるだけで出力のトーンと深度が変わる。「広報担当」と指定すれば肯定的な文章になり、「批判的なアナリスト」と指定すればリスク面に踏み込む。用途に応じて使い分けるといい。
原則2: 問いを具体化する
「要約」ではなく、答えてほしい問いをリストアップする。
以下の点を分析してください:
1. 増収・増益の主因(一時的要因か構造的要因かを区別すること)
2. 前期に示したガイダンスと今期実績の乖離、および乖離の理由
3. 来期ガイダンスの強弱判断(保守的か強気かをコンセンサスと比較して評価)
4. セグメント別で最も変化が大きかった部分とその背景原則3: 出力フォーマットを指定する
構造化して出力させると、複数銘柄の比較や議事録への転記が楽になる。
回答は以下の形式でまとめてください:
- 【業績サマリー】 2〜3文
- 【増減の主因】 箇条書き3点以内
- 【ガイダンス評価】 強気 / 中立 / 弱気 + 理由1文
- 【注意点・リスク】 箇条書き2点以内シーン別プロンプト集(コピペ可)
シーン1: 決算速報を素早く把握したい
あなたは株式投資の経験が豊富なアナリストです。
添付の決算短信を読み、以下を簡潔に答えてください。
1. 売上・営業利益・純利益の前期比増減率(数字で)
2. 増減の主因(一時的要因と構造的要因を区別)
3. 来期ガイダンスの前期比増減率(数字で)
4. 投資家として最も注目すべき1点
各項目2〜3文以内で答えること。シーン2: ガイダンスの強弱を判断したい
あなたは機関投資家向けにレポートを書くアナリストです。
添付の決算短信のガイダンス(来期見通し)を分析してください。
- 会社が示した来期の売上・営業利益の予想値(数字)
- 今期実績と比較したときの成長率
- ガイダンスが「保守的」「中立」「強気」のどれに該当するか、理由とともに評価
- ガイダンスに含まれるリスク要因(為替・原材料・規制など)
保守的かどうかの判断は、当該企業の過去のガイダンス達成率や業界慣行も踏まえて述べること。シーン3: セグメント分析をしたい
あなたは事業ポートフォリオ分析を専門とするアナリストです。
添付の決算短信のセグメント情報をもとに以下を分析してください。
1. 各セグメントの売上・営業利益と前期比増減率を表形式でまとめる
2. 最も業績に貢献したセグメントとその要因
3. 最も足を引っ張ったセグメントとその要因
4. 今後注目すべきセグメントとその理由
数字は必ず億円単位で記載すること。シーン4: リスクを洗い出したい(弱気目線)
あなたは空売り専門のヘッジファンドアナリストです。
投資家にとって不利な情報・リスク要因を中心に分析してください。
- 一過性の利益が含まれていないか(補助金・資産売却・為替差益など)
- 在庫・売掛金の増加など貸借対照表の悪化サイン
- 営業キャッシュフローと純利益の乖離
- ガイダンスに織り込まれていないダウンサイドリスク
- 注記・特記事項に記載されたリスク情報
肯定的な情報は不要。ネガティブな視点のみで答えること。まとめ
ChatGPTは「質問力」をそのまま増幅するツールだ。問いが浅ければ答えも浅い。
プロンプト設計の要点を再掲する。
- 役割を与える: アナリスト・投資家・批判的視点など、目的に応じて使い分ける
- 問いを具体化する: 「要約」ではなく「ガイダンスの強弱判断」など答えるべき問いを列挙する
- フォーマットを指定する: 箇条書き・表・評価ラベルなど、転用しやすい形で出力させる
一度テンプレートを作れば、次の決算から毎回数秒で分析の入口に立てる。決算シーズンに追われる前に、自分なりのプロンプトセットを整えておくといい。

