中小企業診断士1次試験の攻略法:エンジニアが得する科目・苦戦する科目
7科目すべてを均等に勉強するのは効率が悪い。ITエンジニアが有利な科目と苦戦しがちな科目の傾向を分析し、合格への効率的なルートを考える。
中小企業診断士の1次試験は7科目あり、各科目100点満点・合格基準は総合420点以上(60%)かつ各科目40点以上だ。
全科目を均等に勉強するのは非効率だ。ITエンジニアには「ほぼ勉強しなくても取れる科目」と「対策に時間をかける必要がある科目」が明確に存在する。この差を戦略的に使うことが、合格への近道だと実感している。
7科目の概要
| 科目 | 内容 | 難易度(一般) | エンジニアの有利度 |
|---|---|---|---|
| A. 経済学・経済政策 | マクロ・ミクロ経済学 | 中 | △ |
| B. 財務・会計 | 財務諸表・管理会計・財務分析 | 難 | ○ |
| C. 企業経営理論 | 経営戦略・組織論・マーケティング | 中 | △ |
| D. 運営管理 | 生産管理・店舗・QC | 中 | △ |
| E. 経営法務 | 会社法・知財・M&A関連法 | 中 | × |
| F. 経営情報システム | IT・情報戦略・情報セキュリティ | 易(エンジニアには) | ◎ |
| G. 中小企業経営・政策 | 白書・施策・補助金 | 中 | × |
エンジニアが有利な科目
F. 経営情報システム ◎
最も有利な科目だ。ネットワーク(TCP/IP・DNS・VPN)、データベース(SQL・正規化)、セキュリティ(暗号化・認証・脆弱性)、システム開発プロセス(PMBOK・ウォーターフォール・アジャイル)など、実務でおなじみの内容が出題される。
私の場合、この科目はほぼノー勉強で過去問を解き始め、7〜8割の正解率から入れた。追加の勉強は「ITストラテジスト的な経営情報戦略の考え方」の部分のみに絞った。
エンジニアとしてのアドバンテージは大きく、この科目で90点前後を取り、苦手科目のバッファを作るのが理想的な戦略だ。
B. 財務・会計 ○
財務諸表の仕組み(BS・PL・CF)を理解できれば、エンジニアでも比較的入りやすい科目だ。論理的思考と数字への抵抗感のなさが活きる。
ただし管理会計(CVP分析・標準原価計算)は経験がなければゼロから覚える必要があり、2次試験の事例IVにも直結するため、絶対に手を抜けない科目でもある。
「財務3表一体理解法(朝日新書)」などの入門書でBS・PL・CFの連動を理解した後、テキストに移ると吸収が速い。
エンジニアが苦戦しがちな科目
E. 経営法務 ×
会社法・知的財産法・M&A関連法・民法など、法律の条文を暗記する科目だ。エンジニアとしての実務経験がほぼ活きない。
特に「会社法の機関設計」「特許・商標・著作権の違い」は覚える量が多く、かつ出題パターンが変わりやすい。毎年難化傾向があり、合格者の中でも「この科目は4〜5割で何とか通過した」という声が多い。
戦略は「足切り(40点)を絶対に避けつつ、時間をかけすぎない」だ。テキスト1周+過去問3年分を最低限の投資とし、残りのリソースを他科目に回す。
G. 中小企業経営・政策 ×
中小企業白書・ものづくり白書の統計数値、各種補助金・支援策の内容を問う科目だ。毎年白書が更新されるため、最新情報に対応した教材が必須。
エンジニアとして日常的に触れる知識がほぼない上に、「覚えては忘れる」の繰り返しになりやすい。試験直前の1〜2週間で詰め込む「直前集中型」の科目として割り切るのが現実的だ。
C. 企業経営理論 △
経営戦略(SWOT・5フォース・アンゾフ)・組織論(モチベーション理論)・マーケティング(4P・STP)など、幅広い概念を扱う。
エンジニアは「概念の暗記」が苦手なケースが多い。論理的に理解しようとすると、暗記が必要な定義や理論名でつまずく。「理解 → 暗記」の順番で入ると比較的スムーズだ。
効率的な学習スケジュールの組み方
1次試験は年1回(例年7月)。前年の夏から学習を始めると約1年の準備期間がある。
私が採用しているアプローチ:
| 期間 | フォーカス |
|---|---|
| スタート〜4ヶ月 | A・B・C・Dの基礎科目を一通り学習 |
| 4〜7ヶ月 | F(情報)を短時間でクリア → 時間を B・C に集中 |
| 7〜9ヶ月 | E・G の過去問3年分を集中的に仕上げ |
| 9ヶ月〜試験前 | 全科目の過去問演習・弱点補強 |
Fで稼いだ時間をBに投資するのが、エンジニア受験生の黄金パターンだと感じている。
科目合格の戦略的活用
1次試験は科目合格制度がある。60点以上を取った科目は翌年・翌々年の受験で免除される(ただし受験申込時に免除申請が必要)。
エンジニアにとっての活用例:
- 1年目:F(情報)で確実に60点超を取り、科目合格として免除に
- 1年目:B(財務)に注力して科目合格を狙う
- 2年目:残り5科目を合格ラインに持っていく
この2年計画は、フルタイムで働きながら受験するエンジニアには現実的な選択肢だ。
使っている教材
メインテキスト:スタディングの中小企業診断士講座(動画 + アプリ問題演習)
通勤・移動中の隙間時間にスマホで完結できる点が、働きながら勉強するエンジニアには向いている。
補助テキスト:
- 財務・会計:「財務3表一体理解法(朝日新書)」でBS・PL・CFの連動を理解してからテキストへ
- 企業経営理論:「グロービスMBAマーケティング」で概念の背景を理解してから暗記
過去問:「中小企業診断士1次試験過去問完全マスター(同友館)」を科目ごとに使用。10年分の出題傾向が把握できる。
まとめ
エンジニアが診断士1次試験に臨むとき、重要なのは「科目ごとの優先順位づけ」だ。
- F(情報)で貯金を作り、苦手科目の足切りリスクを下げる
- B(財務)に十分な時間を投資する(2次試験にも直結)
- E・Gは「足切り回避」を最低目標に、時間をかけすぎない
「7科目を均等に」ではなく、「有利な科目で稼ぎ、不利な科目で守る」という戦略的な配分が、合格確率を上げる。試験はまだ合格していないが、この方針で着実に前進している実感はある。

