5大総合商社FY2025決算雑感:「資源頼み」からの脱却は本物か
5月1日に出揃った大手総合商社の本決算。三菱商事・三井物産・伊藤忠・住友商事・丸紅を横断して読んで気づいたことを、個人株主の目線でまとめる。
5月1日、三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅の5社が出揃った。昨年はバフェット効果の余韻と資源高で全社好調という分かりやすい構図だったが、今年は少し様相が違う。資源価格の落ち着きの中で、各社の「次の柱」がどこまで育っているかが問われた決算だったと思う。
全体の印象:「底堅い」が正直なところ
5社合計の純利益は前年比で概ね横ばいからやや減少といったところで、サプライズはなかった。原油・石炭の価格が落ち着いたことで、資源依存度の高い三菱・三井は利益を削られたが、その分を非資源セクターがどこまで補えているかが見どころだった。
| 会社 | 印象 | 注目点 |
|---|---|---|
| 三菱商事 | 安定感あり | 非資源比率の向上 |
| 三井物産 | 資源の影響やや大 | LNG・銅の中長期戦略 |
| 伊藤忠商事 | 非資源が強い | ファミマ・繊維の底堅さ |
| 住友商事 | やや慎重な印象 | メディア・不動産の動向 |
| 丸紅 | 電力・アグリが牽引 | 再エネポートフォリオ |
三菱商事:保有銘柄として読む
私が保有している三菱商事については、特に丁寧に読んだ。
非資源セグメントの利益貢献が着実に上がっている点は評価できる。天然ガス・エネルギーへの依存が言われ続けてきたが、食品・モビリティ・デジタルといった生活密着領域が稼ぎ頭として認知されてきた。
一方で気になったのは、ROEの水準だ。バフェットが商社株を買い始めた当初、各社のROEは8〜12%程度と「割安」だった。それが今やプレミアムがついた水準まで株価が上がっている。配当利回りも以前と比べれば低下しており、「当時の割安感」はすでにない。
これを診断士的な視点で整理すると、「バフェット効果による市場評価の修正」はほぼ終わったと考えていい。これからは事業の実力で評価される局面に入る。
伊藤忠を横目で見て感じること
伊藤忠は非資源比率が高い分、今回の環境では相対的に底堅く見えた。ファミリーマートのリテール事業、繊維・ブランドビジネスは景気感応度が低く、安定的に稼いでくれる。
「非財閥系で三菱・三井に追いつこうとした伊藤忠モデル」が今の相場では評価されやすい。ただし、成長ドライバーという観点では大型の仕掛けが見えにくいのも正直なところだ。
私が気にしている3つの問い
決算を読んで、次の四半期にかけて確認し続けたい問いが3つある。
① 非資源の利益は本当に「構造的」か、それとも「たまたま好調」か
コモディティサイクルの谷間に非資源が目立つのは当然だ。次に資源が上がったとき、非資源の貢献が薄れないかどうかを追いかけたい。
② 還元方針の変化はあるか
各社とも自社株買いと増配を続けているが、キャッシュ配分の優先順位が変わるシグナルには敏感でいたい。還元姿勢が変わる=投資機会が来たというサインになりうる。
③ 地政学リスクの織り込みはどこまでか
中東・ロシア・台湾海峡を巡る不確実性は依然として高い。商社は地理的に分散しているが、特定地域への集中エクスポージャーが利益を吹き飛ばすリスクは常にある。IR資料の地域別セグメントは毎回確認するようにしている。
各社の株価・配当指標(2025年5月時点の概算)
決算を読んだ後は、今の株価水準を投資指標で確認する習慣をつけている。あくまで参考値だが、判断の起点になる。
| 会社 | 配当利回り目安 | PER目安 | PBR目安 | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|
| 三菱商事 | 約3.2% | 約10倍 | 約1.2倍 | 約35% |
| 三井物産 | 約3.5% | 約9倍 | 約1.1倍 | 約36% |
| 伊藤忠商事 | 約2.9% | 約11倍 | 約1.8倍 | 約30% |
| 住友商事 | 約3.8% | 約9倍 | 約0.9倍 | 約34% |
| 丸紅 | 約3.2% | 約9倍 | 約1.3倍 | 約32% |
住友商事のPBRが1倍割れという点が目を引く。「解散価値より株価が低い」という状態だが、これを「割安」と見るか「それだけ市場が評価しない理由がある」と見るかで判断が分かれる。バフェットが最初に商社株を仕込んだときのPBRが0.5〜0.7倍程度だったことを考えると、5社いずれも当時よりかなり水準が上がっている。「発見フェーズ」は確かに終わった、という感覚と一致する。
なぜ私は三菱商事を持ち続けるのか
投資を始めた当初、総合商社株は「何をやっているのかよくわからない」という理由で避けていた。変わったきっかけは、中小企業診断士の勉強で財務諸表を系統的に読めるようになったことだ。
三菱商事のセグメント別資料を改めて読むと、天然ガス・金属資源・産業インフラ・自動車・食料・消費産業・電力・都市開発という8つのセグメントが存在する。これだけ多様な事業を上流から下流まで縦断して持っているのが商社の構造的な強みだ。エンジニア的に言えば、水平スケールと垂直統合を両方備えたアーキテクチャに近い。
保有し続ける理由を3点に整理するとこうなる。
① フリーキャッシュフローの安定性
資源価格の変動に左右される部分はあるが、非資源セグメントが安定したキャッシュを生み続けている。FCFが継続して黒字の企業は、配当の継続性という面でも信頼感が高い。投資先を検討するとき、利益よりもキャッシュフローを先に確認する習慣は、診断士の財務会計を学んでから身についたものだ。
② 明確な株主還元方針
配当性向の最低ラインを公約し、自社株買いも継続している。「利益が出たら株主に返す」という姿勢が、数字と言葉の両方で確認できる。何に使うか不透明な内部留保を積み上げ続ける企業より、方針が明示されている企業のほうが長期保有者として安心できる。
③ 事業の「読みやすさ」
診断士で学んだバリューチェーンの視点を使うと、三菱商事の各セグメントがどこで価値を生んでいるかが追いやすい。決算資料のセグメント別データを毎期確認していると、「どの事業が稼ぎ頭になっているか・なりつつあるか」のトレンドが見えてくる。「理解できないものには投資しない」という原則を守りやすい銘柄の一つだ。
一方で積極的に買い増す気にはなれない。すでにそれなりのプレミアムがついており、期待リターンは以前より確実に低下している。今は「保有を維持・配当を受け取り・次の押し目を待つ」という姿勢でいる。投資家の仕事は「完璧なタイミングを掴む」ことではなく、「自分が理解できる判断を続けること」だと思っているから。
まとめ:引き続き保有、ただし過大評価には注意
総合商社株は「日本株の中で割安かつキャッシュを稼ぐ優良銘柄」という位置づけで買われてきた。それ自体は今も変わらないと思っている。
ただ、バフェット銘柄として注目を浴びた当初の「発見フェーズ」はとっくに終わった。これからは地味に事業を追いかけ、ちゃんと稼ぎ続けているかを確認し続ける地道な作業が必要になる。そういう意味では、診断士の財務分析の勉強が地味に役立っている気がしている。
本記事は個人の感想であり、投資を勧誘するものではありません。




